第一回 ◆ 唐子(からこ


 唐子とは文字通り、唐(中国)の子供を描いた文様です。
唐子は江戸時代、長崎・平戸藩の御用窯である三川内(みかわち)焼でしか作ることを許されなかった伝統の図柄です。

 唐子文様の代表が「松唐子」で、松の木の下で遊ぶ唐子に牡丹・蝶をあしらい、輪宝(りんぼう)という模様で縁取ります。
興味深いのは、描かれる子供の人数によって器の格が異なることです。
七人描かれた「七人唐子」が最も格が高く、「五人唐子」「三人唐子」と続きます。

 現在も長崎県佐世保市にある三川内焼の窯元で、三川内焼のシンボルともいうべき絵柄の一つとして有田焼とは別な繊細な染付の線を用いて描かれています。
現代の感覚に合った唐子の図柄の食器も豊富です。








 描かれた唐子とは別に、器を覗き込むような人形がついているものがあり、これを「一閑人(いっかんじん)」と呼びます。
閑人(暇な人)がぼんやり井戸をのぞく姿に似ていることから、その名がつきました。
しかし、人形が子供の姿であることが多いため、最近ではこれも含めて「唐子」と呼ぶことが多いようです。



第二回 ◆ 吹墨(ふきずみ)


 霧吹きで墨汁を吹き付けたかのように見える文様を
「吹墨」といいます。
水しぶきを連想させ、夏向きの文様です。

 竹の管の端に細かい布を巻きつけて布に顔料を含ませ、一方の端から息を吹き込んで器に吹きつけます。これが中国の明代(1368〜1644年)から伝わる吹墨の最も古い手法です。
この手法は日本でも九州の有田の窯などで昭和の初めまで用いていました。
ほうき草を束ねて作ったブラシに顔料を含ませ、指ではじいて絵付けをする方法も、昔ながらの素朴な吹墨の手法の一つです。

 昭和30年代になると、食器の世界にも大量生産の波が押し寄せ、吹墨もスプレーを使うことが主流になりました。








 昔ながらの手法とスプレーとの違いは、製品になってしまうと素人の方にはほとんど分からないでしょう。
絵付けが均一にできるのはスプレーのよさです。手仕事ですと、顔料がポタッと落ちることがままありますが、それなりの味わいをかもします。
いずれにせよ、しぶきの勢いを感じさせるか否かが、吹墨の見極めどころです。



第三回 ◆ 捻文(ねじもん)


 まず最初に、写真の文様をよくご覧になってみてください。
見つめるほどに様々なイメージが湧いてきませんか。
カラカラと音を立てて回る風車、うねってはうずを巻く潮、汗ばんだ額をすっと吹き抜ける涼風・・・単純ながら、イメージが幾重にも広がっていく文様ではありませんか。


捻文は縞文様の一つで、縞を捻じることで文様に動きや変化が加わります。
濃淡3本の筋で描くのが基本ですが、2本だったり、点々を加えたり、多種あります。







この文様の面白みは、なんといっても捻じりの妙にあります。
鋭く捻じりがきいたものはシャープに、ゆったりとした捻じり加減ではおおらかな印象になります。
一筆でシャープな捻じりを描くには相当の技量が必要です。
また、ゆったりとした捻じりは、ややもするとごく普通の縞文様のようになってしまうおそれがあります。
捻文は捻じり加減に作者の個性や技量が現れる文様だといえます。

冬に使ってはいけないという決まりはありませんが、「捻」の持つイメージの水や涼を欲する夏にお使いいただくと、より楽しいと思います。



第四回 ◆ 網目(あみめ)


 食器の文様は身近な自然や生活の中から題材をとることが多くあり、網目文様もその一つです。幾何学的な印象を与えますが、魚や鳥をとるための網を題材にしたものです。


ひっかけ網、玉網(たまあみ)、寄網(よせあみ)
 ――網目文様のバリエーションです。
ひっかけ網は網目同士をひっかけるように交差させます。
玉網は網のつなぎ目が玉になっています。
そして寄網は網目の間隔が寄ったり離れたりと不規則になっています。

網目紋はふだん使いとして飽きの来ない文様ですが、じつは縁起がよいとされる吉祥文でもあります。同じ文様をくり返すところから「連続するもの」「永遠に続くもの」の意味を読みとります。







網」は福を「からめとる」「すくいとる」ものとして商売の世界では昔から喜ばれました。
また、根拠のない迷信ですが、網目のお茶碗でごはんを食べると中風(ちゅうぶ)にならないという言い伝えも残っています。

よくできた網目文様は、食器の内側と外側の網の糸がぴったり合っていて、器の底まで細かく網目が描いてあります。こういう仕事を見ますと職人さんの「どうだ」という声が聞こえてくる思いですが、値段は張ります。
同じ網目文様でも値段に差があるのは、こんな理由もあるのです。





Copyright(c) daimonji Inc.All rights reserved
掲載の記事 ・写真の無断転載を禁止いたします。